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研究詳細 research overview

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1.	構造最適化の基礎理論の研究

トポロジー最適化の基礎理論の研究

構造最適化を中心とした最適設計の方法を、大別すれば、図1に示すように、寸法最適化、形状最適化、トポロジー最適化に分類される。トポロジー最適化はこの3つの方法の中でもっとも自由度が高く穴の数などの構造の形態をも設計変数とすることができる。ここでは、このトポロジー最適化の基本的な方法について研究している。

図1  構造最適化の分類
図1  構造最適化の分類

トポロジー最適化の基本的な考え方は、図2に示す最適構造を含む固定設計領域と次式に示す特性関数の導入にある。

ここで、は求めるべき本来の設計領域である。この固定設計領域において、特性関数を用いて材料の有る無しを示せば、任意のトポロジーを持つ構造を表現することができる。
しかし、この特性関数は、いたるところ不連続な点をもつ可能性がある。この問題を解決し、大域的な意味で不連続問題を連続問題に置き換える方法として均質化法や密度法(SIMP法)などが用いられている。

図2  固定設計領域 D
図2  固定設計領域

図3にトポロジー最適化の最適化過程を示す。

図3-1 図3-2 図3-3
図3-4 図3-5 図3-6
図3  トポロジー最適化の最適化過程
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レベルセット法に基づく形状最適化

構造の大幅な変更を許容しながら明確な外形形状を得る形状最適化の方法として,レベルセット法に基づく形状最適化の方法がある.この方法では,図1.4に示すように,外形形状をレベルセット関数と呼ばれるスカラー関数の零等位面で表現し,外形形状の変動をレベルセット関数の変動に置き換えて形状最適化を行う.したがって,この方法は,従来のトポロジー最適化とは異なり,最適構造の輪郭を常に明確に表現することが可能であり,グレースケールなどの問題を生じない特長をもつ.ただし,形状最適化の方法であるため,新たに境界が生成されるようなトポロジーの変更は許容されない.

二次元平面におけるレベルセット関数(コンター表示)の変更による形状変更の様子
図1.4  二次元平面におけるレベルセット関数(コンター表示)の変更による形状変更の様子

図1.5に熱アクチュエータの最適設計問題に適用した数値解析例を示します。

熱アクチュエータの形状最適化
図1.5  熱アクチュエータの形状最適化

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レベルセット法に基づくトポロジー最適化

従来のトポロジー最適化(均質化設計法,密度法)の問題点と,レベルセット法に基づく形状最適化の問題点を本質的に解決する新しい方法として,レベルセット法とフェーズフィールド法の考え方に基づいたトポロジー最適化法を世界に先駆けて開発した.この方法では,最適構造の輪郭を常に明確に表現しながら,トポロジーの変更をも許容した構造最適化法である.図1.6に二次元剛性最大化問題に適用した数値解析例を示す.

正則化係数の変更による最適構造の比較
図1.6  正則化係数の変更による最適構造の比較

図に示すように,この方法では,最適化問題の正則化のために導入する正則化係数の設定値を変更することで,最適構造の幾何学的複雑さを制御することが可能である.また,得られる最適構造はいずれも明瞭かつ滑らかであることを確認することができる. なお,本手法を発表した次の論文は,平成21年度日本機械学会賞(論文)を受賞している. 『山田崇恭,西脇眞二,泉井一浩,吉村允孝,竹澤晃弘,レベルセット法による形状表現を用いたフェーズフィールド法の考え方に基づくトポロジー最適化,日本機械学会論文集,75巻,753号,A編 (2009年5月)』 また,YouTubeに関連動画をアップロードしています.(http://www.youtube.com/user/OSDELab/videos)
 以上の結果から,レベルセット法に基づくトポロジー最適化では,従来法と比べて実際の製品設計への適用の可能性が高いと言える. 本トポロジー最適化手法に基づき,株式会社ユーシン精機様との共同で高性能射出成形機用ロボットを開発した(図1.7).その結果,同社従来機種に比べてロボット総重量を13%削減することに成功し,軽量化に伴うロボット動作の高速化により,取り出しに必要なサイクル時間を11%削減することができた.

レベルセット法に基づくトポロジー最適化を用いて開発した高性能射出成形機用ロボット
図1.7  レベルセット法に基づくトポロジー最適化を用いて開発した高性能射出成形機用ロボット

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レベルセット法に基づくトポロジー最適化の展開と拡張

当研究グループでは,世界に先駆けてレベルセット法に基づくトポロジー最適化法を開発し,その方法論の展開と拡張を行っている.

有限被覆法を用いたトポロジー最適化

(東北大学寺田賢二郎准教授,茨城大学車谷麻緒講師との共同研究)
金属の表皮効果の考慮が必要な電磁波伝搬問題や,外形形状表面に圧力荷重が作用するような設計依存荷重問題においては,設計する物体境界面に対して,陽に境界条件を与える必要がある.ここでは,有限被覆法とレベルセット法に基づくトポロジー最適化を組み合わせた方法を開発した.これにより,設計領域内にける物体境界表面に対して,陽に境界条件を与えることが可能になった.図2.1,図2.2に,剛性最大化問題に適用した例を示す.

設計領域と境界条件 最適構造

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幾何学的非線形を考慮したトポロジー最適化

近年,計算技術やコンピュータの発達により,比較的計算時間の要する構造非線形問題への最適設計の適用も進められており,座屈などの不安定現象を考慮した最適設計が可能となっている.本研究室では,粒子法による幾何学的非線形解析を導入し,幾何学的非線形性を考慮したレベルセット法に基づくトポロジー最適化手法を構築した.ここでは,剛性最大化問題に適用した例を示す.

有限要素法による線形解析と粒子法による非線形解析を用いた場合の最適構造の比較
図2.3  有限要素法による線形解析と粒子法による非線形解析を用いた場合の最適構造の比較

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信頼性・ロバスト性に基づく最適設計

(大阪府立大学 小木曽望准教授共同研究)

機械システムの設計において,システムの高度化に伴い,システムの信頼性や,設計パラメータ・使用環境などの不確定性を考慮したロバスト設計が重要になっている.ここではロバスト性を考慮した最適設計として,荷重の空間的な不確定性を考慮したトポロジー最適化法の数値解析例を示す.
図2.4に示すように,下端境界に空間変動を有する分布荷重を与えたと場合と,下端境界に均等な分布荷重を与えたときの確定的な最適設計で得られた最適構造を比較する.ロバスト設計で得られた解は,確定解と比べてアーチが低く,柱の本数が増えており,これにより分布荷重に対してロバストな形態が得られていることが確認できる.

有限要素法による線形解析と粒子法による非線形解析を用いた場合の最適構造の比較
図2.4  有限要素法による線形解析と粒子法による非線形解析を用いた場合の最適構造の比較

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トポロジー最適化による機能構造物の形状創成

トポロジー最適化では今までにない新しい機能や高い性能を持つ構造物の形状創成に利用できる.ここでは,コンプライアントメカニズム,IPMモータ,NRDガイド,パッチアンテナ,電磁メタマテリアルに適用した設計例を示す.

有限被覆法を用いたトポロジー最適化

コンプライアントメカニズムは従来の剛体とジョイントで構成される機構とは異なり,構造の適切な場所に柔軟性を付加することにより,構造全体で機構の性能を得る新しいメカニズムである.
コンプライアントメカニズムはその形状的特徴により,(1)無騒音,(2)無潤滑,(3)部品数の削減,(4)リサイクル性,(5)小型化などの多くの利点を持ち,機械部品だけでなく,医療部品,MEMS(Micro-Electro mechanical Systems)など多くの適用範囲が検討されている。 図3.1にコンプライアントメカニズムの設計例,試作品,MEMSへの適用例を示す.

コンプライアントメカニズムの設計
図3.1  コンプライアントメカニズムの設計

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IPMモータ

永久磁石を使用したIPMモータは,高効率・高出力の特徴を持つため様々なデバイスに用いられている.IPMモータにおいては,ロータやステーターの形状,磁石配置などがモータの性能に大きく影響を及ぼす.ここでは,IPMモータのロータ形状の最適設計を行った例を示す.なお,最適化の目的関数はステーターとロータ間のエアギャップ部における磁束密度が正弦曲線となるように,正弦曲線との差の二乗値の最小化を行った.

IPMモータの設計モデルと最適構造
図3.2  IPMモータの設計モデルと最適構造

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NRDガイド

IPMモータの設計モデルと最適構造
図3.3  NRDガイドの設計例

(株式会社 豊田中央研究所 共同研究)

NRDガイド(Non-Radiative Dielectric Waveguide)は,電磁波の伝送に使用する導波路のひとつである.その構造は,テフロン等の誘電体を導波路とし,その導波路を2枚の金属板ではさんだ構造をしている.この金属板の存在により,存在可能なモードの条件により不要放射がないことが特徴である.図3.3にNRDガイドの誘電体分布のトポロジー最適化を行った結果を示す.この設計例は,入力電波に対して,指定した位置における出力波の最大化を行っている.

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パッチアンテナ

(株式会社 豊田中央研究所 共同研究)

近年は,無線利用技術の発展により,様々な機械製品においてアンテナなどの電磁波デバイスが活用されている.そのような電磁波デバイスでは,大量の情報を高速に送受信するための小型で高性能なアンテナが必要となり,その代表的なものとして,パッチアンテナが用いられている.パッチアンテナは,誘電体ブロックと,そのブロックを挟み込むグランドプレートと電磁波を放射するパッチの2枚の金属で構成される.一般に,パッチアンテナの性能は,構成部品の構造・形状に高く依存する.ここでは,高性能なアンテナを設計するために,パッチアンテナの設計においてトポロジー最適化(密度法)を適用した事例を示す.
図3.4に設計領域と解析モデルを示す.設計領域は,誘電体ブロックの上面の金属パッチ部(L=40mm)で,周波数5GHzの入力電圧に対して電力給電ポート(Port1)における反射電力S11の最小化,すなわち放射電力の最大化を行った.最適構造を図3.5に示す.

設計領域 最適構造

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電磁メタマテリアル

メタマテリアルとは自然界に存在する媒質が通常持たないような性質を持つように設計された人工媒質のことであり,代表的な電磁メタマテリアルとして,負の屈折率,すなわち,負の誘電率と負の透磁率を持つ媒質がある.その応用として,例えば,ハリーポッターの透明マントのような装置,すなわち光を対象物から迂回させ,あたかも対象物が透明化されたように見えるようにするクローキング装置や,従来の回折限界を超えることができるスーパーレンズ,さらには,ビームアンテナの広角化や,環境発電装置の高効率化など様々な電磁気デバイスへの応用が期待されている.ここでは,誘電体を用いて負の透磁率を実現する誘電体メタマテリアルの設計において,レベルセット法に基づくトポロジー最適化手法を適用した例について示す.
図3.6に設計領域を示す.上下面と前後面は周期構造となるように境界条件を与え,左面から電磁波を入射する.周波数0.3THzにおいて負の有効透磁率を示す構造を求めるために,有効透磁率の最小化を行った例を示す.図3.7に得られた最適構造を示す.

設計領域 最適構造

また,図3.8に有効透磁率の周波数特性を示す.得られた最適構造では0.3THzにおいて有効透磁率が約-3.5となり,有効透磁率が負となる構造が得られていることがわかる.図3.9に,中央部断面(x=75μm)での磁界分布をコンター図で,電界分布を矢印で示す.円環電流が発生し,それにより入射磁場に反抗する磁場が誘導されていることが確認できる.

有効透磁率の周波数特性 磁界分布(コンター)と電界分布(矢印)

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